リカ活動家の日々のこと

リカちゃん人形に着物を仕立てて着せる沼に浸かる活動家。

【本】I was born for this(Alice Oseman著)

この前からネットフリックスの「Heartstopper」の投稿も増えていましたが、沼にハマっていたのは私だけではなかったらしく、あっという間にシーズン2と3の制作が発表されました。

優しい物語が広がっていっていてうれしい。

 

この本は「Heartstopper」の原作者アリス・オズマンの三冊目のヤングアダルト小説。

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このアリス・オズマンと言う人は1994年生まれで現在28歳。

17歳の時には出版社と契約し、20歳の時に最初の小説が出版されています。

 

アリス・オズマンの公式ページはこちら↓

 

aliceoseman.com



「ハートストッパー」は漫画ですが、小説家としてデビューしてから漫画も本格的に初めてあっというまに小説家としても漫画家としても多くのファンを獲得している恐ろしい才能の持ち主。

 

私は彼女の小説を初めて読みましたが、英語の本をこんなにクリアに情景をイメージしながら短時間で読み切ったのは初めてかもしれない。

ヤングアダルト小説なので平易な単語が使われていて英語ネイティブでなくても読みやすく英語学習者にもおすすめです。

あとイギリス人の作家なので単語使い(fancyとか)が私には面白かった。
心を静める時に、すぐコーヒーではなくTEAを勧めるのもなんかブリティッシュ(笑)

 

こんなにすべての登場人物に魂を吹き込んで、ドキドキと最後まで読ませる小説はなかなか無いと思う。

「ハートストッパー」を観た事(読んだこと)のある人なら納得すると思いますが、人への視点があったかくて、属性で人をくくることの乱暴さが説教臭くなく描かれていて、もがきながら乗り越えていく若い世代にシンプルに感動する。

 

本当にすごい世界を創り出す人がいたもんだと驚嘆します。

 

「推し」がいることで生きていけると思い込む一途さと、それを乗り越えて「誰かの人生ではなく自分の人生を生きる」ことを選び取る主人公たち(この人の作品はいつも主人公がひとりじゃないなと思う)に、あったかい気持ちになる一冊でした。

 

それにしても最近ハートストッパーについて書きすぎですが、投稿貼り付けておきます。

tototomoton.hatenablog.com

 

漫画もおススメ(これも英語版で読むと英語学習の息抜きにちょうどいいかも)

tototomoton.hatenablog.com

 

 

 

映画「わが青春つきるとも」

戦前に治安維持法で24歳で命を奪われた伊藤千代子の生涯を描いた「わが青春つきるとも」を観てきた。

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正直言って前半は、むかし学校で見せられた教育映画(と言うジャンルがあるかは知りませんが)的な印象で、言ってしまえば説教くさい演出に残念な意味でドキドキしましたが、後半になるにつれて主演女優さんや同志役の若い女優さんたちの熱演と、事実の重みが迫ってくる作品でした。

 

でも、この素材を今に蘇るものにするなら、もう少し演出は、、、と感じた。

 

金子文子と朴烈」とか「マルモイ」とか特高警察の役を韓国の俳優さんが演じてても、100年前の話でも迫って来て映像としての力を感じたのになぁと、ちょっと残念に思いつつ、会場で同時開催されていた保存会の展示を見る。

 

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この展示、一見地味ですがかなり見応えがありました!

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伊藤千代子と一緒に投獄されていた原菊枝が2年間の獄中生活を綴った「女子党員獄中記」は手にとってパラパラ見せてもらえます。

 

「千代子さんのこと」のところでは、トイレの中に文書を捨てる映画のシーンがあったけど、その前に特高警察に捕まった千代子が電車で移動するときに着物の下で文書を細かくちぎって少しずつ捨てる描写が超スリリングに綴られていてドキドキする。看守のことも「ゴリラ看守」とか書いてて口が悪くてニヤニヤする。

 

他にも原菊枝の入っていた独房が金子文子と一緒に捕まった人の部屋だったことや、金子文子たち「少し前の主義者」の時代は昼間の体操も庭を掃除してから「どうぞ」と送り出されてお姫様の様な扱いだったし、お芝居を見に抜け出したりもしてたらしいと書いてから、1920年代も終わりかけの自分たちの時代になると思想犯も大衆化して数もどんどん増えてきたから扱いが全然違うとえらい内情をぶっちゃけている。

 

映画見ながら金子文子を思い出したばかりだったから、当時の伏字の本に名前が出てきてビックリした!

 

小林多喜二にしろ、伊藤千代子にしろ、本人の資質ももちろんあれど、1人で生まれた英雄ではない。

100年前に生き、大正デモクラシー普通選挙(当時は男子だけだったとしても)の実現に沸いた時代の空気の中で伊藤千代子は教育を受けた。

仲間と学んで矛盾に怒る人間性は作られた。

あの時代にそう言う群像があって闘いがあったことを、「戦前の民主的出版物を保存する会(保存会)」のアーカイブは教えてくれる。

そしてこのコレクションが市井の人の会費や寄贈で成り立っていることが改めてすごいと思う。

 

映画と一緒にこの展示を大阪では見れたのはラッキーでした。

映画はこれから大阪でも全国でも上映会が予定されています。

辛口なことを書きましたが、伊藤千代子の生涯や彼女と同時時代に生きた、投票はできなくても政治を変えたいと願った戦前の女たちの物語はもっと知られてほしい。

漫画もおススメです。

tototomoton.hatenablog.com

 

映画「マルモイ」と「金子文子と朴烈」も。

tototomoton.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

ムビリオバトルで負けた

本日のムビリオバトルのテーマは「色」

私はこの作品で参戦しました。

 

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「あなたの名前を呼べたなら」

残念ながら負けてしまいましたが、負けても文句なしに楽しいのがムビリオバトル!

 

今回のために改めて見直したら、新たな発見もあって同じ作品を何度も見るのも良いものです。

でも、やっぱり勝って大きいスクリーンで観たかったなぁ(結局悔しい)

次回のテーマは「しごと」です。

皆様もよかったらお気軽にご参加ください。

 

恒例になってきましたが5分間のプレゼン用に原稿を書いたので載せておく。

 

今回のテーマ「色」で思い出したのは「あなたの名前をよべたなら」という作品です。この作品はインドの田舎出身の未亡人が都会に出てメイドになり、ご主人と恋に落ちる恋愛ものです。フランス・インド合作映画なのですが、ロヘナ・ゲラ監督はこの映画が初めての監督作品であるインド人の女性です。

アメリカで学び、パリで暮らした経験もある彼女が作ったこの作品はフランス的に洗練された色使いも、インドの祭りや風景の色に加えてヒロインの纏う布の色で心情が表現されていて、画面に差し込まれる色がその時々でとても印象的な作品です。

さらに字幕で観る私たちには分かりにくいですが、登場人物が使う言葉にも注目したい。

主人公ラトナの出身地のマラーティー語と都会で話されるヒンディー語、ご主人様であるアシュヴィンに話すときの英語と一人の人間が使い分ける言語もまたカラフルです。

相手役のアシュヴィンもインドの富裕層なので、家族や友人とはすごく早い英語で話します。同じ国の中でこれほど使われる言語が違うということも驚きですが、そのくっきりと階級の別れているインド社会ではありえない恋物語をあえて作った監督の想いを改めて考えさせられます。

監督自身がインドにいた時には自分の家にもメイドいて、ナニーに育てられたそうです。海外生活をする中で外からインド社会を見たときに感じた違和感。インタビューで「スタンフォードイデオロギーや哲学に出会い色んなことを学んだあと、インドに帰国すると以前と全く同じ状況でした」と、その複雑な心境を語っています。

監督が「「私たちは、どのようにして人を愛する許可を自分に与えるのか」ということを、この作品を通して問いたかった。とはいえ決して説教臭くしたくなかったし、彼女を「被害者」として描くことは絶対にしたくありませんでした」と語っているだけあって、主人公のラトナの生命力は本当に説得力がある。主役を演じた女優さんは「絶対に自分がこの役をやる」とマラーティー語も体得して役に挑んだそうです。

アシュヴィン役を演じた俳優さんはインド系のシンガポール人。

監督も「インドには良い俳優が多くいますが、アシュヴィンの境遇を心から理解できる俳優が必要だった」と監督が語るほど、この作品が今のインドでは想定されえない恋物語であることが分かります。

とはいえ、あり得ない人と恋に落ちたり、身分違いの恋に苦しんだり、すれちがったりと恋愛ものの王道を抑えてあってシンプルにドキドキできる作品です。

そして、小さい画面で観るよりも劇場の大きなスクリーンで観る方が見ごたえのある作品でもあります。

是非カラフルな世界をぜひ一緒に楽しみましょう。

 

 あ、最後にこの映画を劇場で観た後に書いた当時の投稿も載せておきます。

もう三年も前の作品なのか…。びっくり。

tototomoton.hatenablog.com

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オールドピープル

子どもがテスト前なので英語の問題を出せと言う。

 

「彼女がお年寄りを助けるのは珍しいです」を英語にする問題があって解答欄に「It is unusual for her to help old people」と書いてあって度肝を抜かれる。

 

オールドピープル!!!

 

失礼すぎる。

senior peopleとか、eldery peopleとかならまだしも「古い人」って。

 

知ってるボキャブラリーが限られるのは仕方ないにしても、それならあえて出題しなくて良くないか?

 

それにしても、うちの娘さんの「学校のリスニングのスピードが異常に遅い。それを日本語にしたらこんな感じ」というネタが面白すぎる。

 

こんなことしてゲラゲラ笑ってたらまた日が変わりそうです。

 

別のことで盛り上がる。

テスト前あるある。

 

漫画「ぼくのお父さん」矢部太郎作

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わたしはお笑いに詳しくないのでこの作者の人は芸人さんとしてというよりも「大家さん」の漫画を描く人としてしったのですが、先日この人が書いたある漫画の書評を読んで、とても豊かな子ども時代を過ごした人なんだろうなと思った。

 

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で、お父さんのことを書いた漫画も出ていたので買ってみた。

 

予想はとても当たっていたし、少し外れていたのだなと思う。

 

阿佐ヶ谷姉妹が帯に「心許なさが素敵!」と書いているけれど、本当に頼りにならない親を持つということの悲哀も感謝も絶妙に描かれている作品だと思う。

 

こんな子育てをしてみたいけど、凡人すぎる私はやっぱり心もとない気持ちにもなってしまうなぁ。

 

本「モディリアーニ モンパルナスの伝統」(宮下規久朗著)

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GW中に実家に帰っておっちゃんの書斎からもらってきたこの本。

これを読んでモディリアーニがイタリア人かつユダヤ人だったこと、彼の人生がたったの35年だったことを知った。

 

そして10代のころのモディリアーニの写真も118ページに載っているけど超絶オトコマエ!!!

 

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イタリア人のお父さんと、フランス人のお母さんの間に生まれ、フランス語も流暢だった教養あるモディリアーニ

 

イタリアではあまりユダヤ人差別がなかったから21歳でパリにやって来て、ユダヤ人への差別にめっちゃムカついたりしている。

 

とはいえ伝統あるイタリア文化の影響を捨てることもできず、自由奔放に生きたいと思いつつ結構周りを気にしながら生きた人だったみたい(男前あるあるか?)

 

自分で破滅型の芸術家を演じて、お坊ちゃまのイメージを払拭しようとしたと著者は書いている。

 

ピカソ

モディリアーニが酔っ払って醜態をさらすのはいつもカフェ・ロトンドやモンパルナス大通りなど目立つところばかりだ

と、言ったらしい(ピカソ、鋭すぎて怖い…)

 

20世紀がはじまったばかりのパリには世界中からありとあらゆる若い才能が集まり、そのうちの誰か一人を目をつぶって選んでも映画になるような場所だった。

 

その中でも私が気になったのはモディリアーニの元カノのベアトリス・ヘイスティング。

 

気が強すぎてモディリアーニとは殴り合いの喧嘩もしたという彼女は、ロンドンの「ニュー・エイジ」という雑誌の特派員としてパリにやって来て、5歳年下のモディリアーニに出会っている。

 

別れた後はファシズムに熱狂し、(ユダヤ人のモディリアーニと付き合ったのに!)1943年にペットのネズミを道連れにガス自殺している。

 

なんちゅう人生だ、、、。

 

いま大阪では大規模なモディリアーニ展が開かれている。

 

超有名な画伯としてではなく、ヤンチャで才能あふれる若者だったモディリアーニが絵の中に閉じ込めた女たちに会いに行ってみたくなる一冊でした。

 

 

 

映画「ツユクサ」

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連休に母と観てきました。

【後半ネタバレが含まれますので、ご注意ください】

 

「しんどくない映画が観たいな」と2人で決めたのが「ツユクサ」。

 

出演者も好きな人が多かったし、ストーリーや設定も別に嫌な気持ちになる物ではなかったけど、正直なところ私は面白くなかった。

 

なんでだろうなぁ?と、考えてみたけど、心当たりも特にない。

 

まぁ、なんでだろうなぁという感じです。

 

かもめ食堂」の舞台が日本版みたいな感じで、もしかして同じ監督か?と調べたら違ってた。

 

途中でじゅげむを唱えてる人の存在も最後まで意味がわからない。

中山千夏の歌は、ある一定の年齢層には響くのかもしれない(私は知らない歌だった)

 

とりあえず、今の年齢の私がみてもあまりピンとくる話ではなかったですが、帰りに母が「ハッピーエンドになって良かったわ」と言った。

 

もしかしたら何年も後になって、この映画を母と観たなとちょっと切ない気持ちで思い出すのかもしれない。

 

中学生の時に母と観た「我が心のボルチモア」を、話は忘れてしまってもなんだか憶えているように。