読む時間がなくても読みたいものは読み終わるものですね。
朝の時間に1章ごと読み進め、今夜読み終わりました。
この人の「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を読んで沸き立つ興奮を抑えきれずブログに投稿をしたのはもう一年近く前。
その彼女があとがきで
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で青竹のようにフレッシュな少年たちについて書きながら、その全く同じ時期に、人生の苦汁をたっぷり吸い過ぎてメンマのようになったおっさんたちについて書く作業は、複眼的に英国について考える機会になった。二冊の本は同じコインの両面である。
と、書いているけど、本当にEU離脱を選んだイギリスの選挙結果を見て、「あぁ!!なんでまた?」と思っていた自分が英国という国を極東の国から一方的に見ていたことに気づかされる。
もちろん彼女自身の緊縮財政はくそったれ。自己責任論は庶民の首を絞めるだけ。というスタンスは気持ちいいほど揺るがない。
でも同時に世代的にEU離脱に賛成に回ったベビーブーマーのおっさん世代を、限りない愛情をもって書く著者は、そんな切ないおっさんも含めて今の英国を、というか人間をまだあきらめてないと思う。
どのおっさんたちも半ケツで踊りながらも、切なくって、不器用で、可愛すぎるのだ。
多分どの人も好きになると思うけど、どうしても全部読む時間がないという人は120ページからの、14章だけでも読んでほしい。
英国の国民保険サービス(NHS)がどれほどイギリスの庶民にとって誇りであり、どんなにひどくなっても愛着のある制度かがよくわかる。もはや緊縮財政のせいで完全に破綻してる制度だとはいえ、発足の理念を読んで私でもしびれた。
病気とは人々が金銭を払ってする道楽ではないし、罰金を払わねばならぬ犯罪でもない。それは共同体がコストを負担すべき災難である。
ほんとうにそうだ。どこの国だってほんとうはそうなんだ。
ああ、感想も長くなるのでこの辺で。
とにかく遠く離れた英国でブレイディみかこさんという、ひと回り上の世代のロックな女性が暮らしているというだけで、なんだか将来を悲観もしてられないなと思う。
誰もがくそったれな現実を、まわりの人の人間らしさに光を見つけながら生きてる。
そのことを思い出させてくれる一冊です。