ホームレスの人が図書館を占拠する「THE PUBLIC 図書館の軌跡」を見たばかりだったので、この絵本がとりわけ染みました。
家ってなんなんだろう?という問いかけを子どもと一緒に紡いでいく良い絵本だと思います。
加古里子さんはあの有名な「だるまちゃんとてんぐちゃん」を作った人です。
定年近くまで働きながら二足の草鞋で絵本作家をされていたことを「未来のだるまちゃんへ」(文春文庫)読んで知りました。
大学を卒業して昭和電工という会社で働いていた24歳の時、川崎の労働者街の子どもたちにお話をつくるセツルメント活動をしていたそうです。
この絵本のあとがきで加古さんが
家のつくりを屋根、壁、出入口、窓の順に並べたこの本を見て専門の建築家はきっと笑われるでしょう。
しかし、まだ戦災の名残の残っていた当時、浴室、台所、トイレのない寄宿舎などに住む人が大勢いたのです。
そうしたところの子に、「自分が住んでいるところも立派な家だ」と、思ってもらえるよう描いたのが、上に述べた五つの要素となりました。
その後各地で災害が起こるたび、特に2011年3月11日に起きた、東日本大震災で、体育館や仮設住宅に居住している子どもたちの様子を当時と比べ、胸が痛む思いです。
と、書いている。
今もかわいらしい絵本や趣向を凝らした絵本はたくさんある。
でも、それを読む子どもの深いところに本当に寄り添って書かれた絵本は実はそれほど多くはないのではないかと思う。
加古里子(かこさとし)さんの作品はどれも、子どもを信頼し、尊敬し、子どもからこそ学ぼうとする謙虚で誠実な大人が作る、そういう絵本だなと思うのです。