保育士さんや絵本のことに詳しい方なら松岡享子さんも東京子ども図書館も有名なのかもしれませんが、私にとってはたまたま手に取った文庫本での初めての出会いでした。
この読み聞かせしている女性が松岡さん↓
1935年に神戸で生まれて神戸女学院と慶応の図書館学科を卒業した松岡さんは戦後6年目に渡米し、ウエスタンミシガン大学の大学院で児童図書学を学んだあと、ボルチモア市の公共図書館に勤務されていたこともあるとか。
帰国後も絵本の翻訳、創作、研究をつづけ、現在は東京子ども図書館の名誉理事長をされています。
ものっすごい才女!
こういう人が戦後の日本の豊かな絵本文化を耕してくれていたのかと、この本で紹介されている絵本を読み聞かせられて育った私は、感無量でした。
この本のなかで松岡さんは子どもに絵本を読むときに「徳目」を教えたり「ねらい」や「意図」を問題にする教育に疑問を呈しています。
なるほど、絵本の中にも深い教訓が含まれていることは少なくありません。しかし、それはお話のおもしろさのかげにかくれて、子どもの心にすべりこみ、そこで長い間じっとしているうちに、子どもと一緒に成長していくような性質のもので、言葉として教えたり、その場で理解させたりできるものではありません。
こうも書かれています。
子どもに、それだけの用意ができていないのに、その子の前に、ある考えを突き付けるようなことをすると、それは、子どもの心を伸ばすことにはならないで、閉じ込めてしまう事になるでしょう。たとえそれが正しい考え方であったとしても、子どもが成長して、その考えに到達したのと、子どもがその考えを押しつけられたのとは、同じではありません。
私が「道徳教育」に対して感じている違和感を言語化してくれた、このくだりに頷きすぎて首がもげそうになりました。
本の後半はおすすめの本と、それぞれの本をどうやって読み聞かせるかの実践書でもあります。
これ、若いお母さんや保育士さんにとってはものすごいお宝本だろうなぁ。
大人が絵本に出会いなおすのにもうってつけの一冊です。
文庫本でお手頃なのに素敵な図書館の写真がいっぱい巻頭カラーで付いてるのもうれしいです。
いつか上京したら行ってみたい場所がまた増えました。