気が付いたらもう9月。
気を抜いたらブログの更新は滞るものですね。
久しぶりに村上春樹を買いました。
書いた人が分らなくても数行読めば村上春樹の文章だとわかる。
これって考えてみればすごいことだなと思う。
文章の組み立ても、タイトルになっている猫の話を初めとして話の持っていきかたも、やっぱりこんな文章を綴れる人は稀有だなと思う。
そして何よりもスッと入ってくるこの浸透力!
あっという間に読めます。
でも、内容はとても濃い(村上春樹なのに濃いってちょっと不思議ですが)このエッセイは戦争に行った父親の、そして決してうまくいっていなかった父親と息子の関係を丁寧につづった一冊です。
でも父親が中国で捕虜を殺してた(もしくはその現場にいた)という記憶についての箇所は、彼にしては唐突なほどストレートな文章で(村上春樹がこういう文章を書くのか)と驚いた。
いずれにせよ父の回想は、軍刀で人の首がはねられるという残忍な光景は言うまでもなく幼い僕の心に強烈に焼き付けられることになった。
(中略)
人の心のつながりとはそういうものだし、また歴史と言うのもそういうものなのだ。
その本質は<引継ぎ>という行為、あるいは儀式の中にある。
その内容がどのように不快な、目をそむけたくなるようなことであれ、人はそれを自らの一部として引き受けなくてはならない。
もしそうでなければ、歴史と言うものの意味がどこにあるだろう?
こう書かなければならない程、今の社会全体が戦争というものを過去の曖昧な記憶にしようとしていることに対する危機感があるのだろうと思う。
とても読み応えのある一冊でした。