リカ活動家の日々のこと

リカちゃん人形に着物を仕立てて着せる沼に浸かる活動家。

字幕屋のホンネ(太田直子著)

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字幕屋のホンネ

面白いと思うのは自分も字幕の勉強をかじったからかもしれないけれど、とにかく「ほんまそう!」ってポイントの多い本でした。

 

依頼された映画のジャンルや社会背景をどうやって調べるか、その調べた知識の大半を忘れながら次の作品取り組むかの悲喜こもごもが語られ、配給会社から「宣伝方針に沿った修正」を不本意にやらされることに悔しい想いをしたり、知恵を絞って本筋を変えないように対決するくだりはとにかく興味深い。

 

ものすごく誠実に言葉と映画に向き合ってきた人なんだなぁと思う。

 

自分が不本意に字幕を変えられた経験では、その作品のタイトルを明かさない。

著者はそれが保身であることも認めつつ

おそらくどんな世界でもいちばんおもしろい話は公の場では聞けないのがふつうだろう。オフレコの「ここだけの話」がいちばんおいしいのだ。

私もほんとうは実名をばんばん挙げて激白したいのだが、それはまた引退後の話。

と、その章を終えている。

 

あぁ聞きたかったなぁ!!!

 

と、いうのも太田直子さんは2016年にお亡くなりになったのだ。まだ60歳にもなられななかったと思う。

太田さんもロシア語畑みたいですが、同じロシア語通訳者でエッセイストの米原万里さんといい、素晴らしい言葉を紡ぐ人はどうしてこうも若くして亡くなってしまうのか。

 

私にとっては保存版の一冊です。