若くして亡くなったこの諫早出身の芥川賞作家のことは本屋でこの本をたまたま手にとって初めて知った。
亡くなられた後に作家のお兄さんから古本屋を撮影した膨大な量の写真を譲り受けた岡崎武志さんがまわりの古本屋や野呂邦暢さんの文学が好きな人たちと一緒に出版した2500冊限定の写真集は瞬く間に売り切れ、今や古本市場では高値で取引されるまでになる。
そして昨年末に待望の文庫化となったのがこれ。↓
素人の撮ったピンボケの写真のクオリティは別にすごくない。
それでも70年代に、東京の神保町や早稲田の古本屋さんがどんなに栄えていたか、この夭折の作家がどれほどその空気を愛したかがよく分かる。
また古本屋や本にまつわる短いエッセイが何遍か収録されいるけれど、そのドラマがどれも味わい深い。
この人は文学を通じて人と繋がりたかった人だったのだろうなぁと思った。
当時の野呂氏を含む若者たちが文学や社会科学、音楽を語り合う熱量が時を経てもじんわり熱く伝わってくるエッセイでした。
もしかしたら私が若い頃に働いていたのが神保町だったから贔屓目もあるのかもしれないと気を引き締めて?読みましたが、どう考えても本好きにはたまらない一冊だと思う。
あ、余談ですが岡崎武志の「女子の古本屋」もすごくおススメです。