本というのは不思議な存在だと思う。
読むタイミングをあちらの方から待っていて、目の前に登場してくるような本がある。
この本は、たまたま読書家の知人の本棚で見つけて、手に取った。
興味を惹かれたので借りてきて、読み始めた。
アメリカのボストン出身のユダヤ系のインテリ女性が、仕事で出会った日本人男性と恋に落ち、主婦になる。
言ってしまえば、そういうストーリー。
恋愛に興味津々の人には、ドラマのように出会う2人のエピソードにワクワクするだろうし、妊活経験のある人は、2人の経験する日本での妊活経験に共感が押し寄せると思う。
アメリカの都会と、日本の大阪。
どちらも知っているので、著者の感じる違和感や心地よさがとてもよく分かった。
そして、ここまで楽しく読みながらも私は、著者の義父の手が震えていることが気になっていた。
介護の章になって、この人が自分の父親と同じパーキンソン症候群だと知ることになる。
先月救急車で運ばれて、コロナ禍で面会も叶わない私は、病院で付き添う著者の描写に文字通り胸が潰れるような気持ちになった。
環境が変わって父のせん妄は酷くなってきた。
昨日、電話で話した主治医の先生が「僕が若すぎるからか、学生と思われたみたいで。診察を拒否された時は、ちょっと悲しかったです」と言った時、「本当の父親はそんな事を言う人間ではないんです」と言いながら切なさが押し寄せた。
孫にだって、敬意を持って意見を聞く人が、年齢だけで人を判断するはずがない。
それなのに父は今とても辛い疑心暗鬼の世界で生きている。
「もちろんです。本人の責任ではなく、病気です」と、穏やかにキッパリ言い切ってくれる主治医の先生の言葉に、とても救われた。
とにかくこの本が、万人に響くかどうかは冷静には判断できないけれど、今の私にとっては、思いっきり泣ける誘発剤になりました。
こんな読書もあるんだなぁ。