毎日放送のドキュメンタリー担当のディレクターである斉加尚代さんの新書。
一章の沖縄のドキュメンタリーのことを書いた章で、大阪の機動隊員が沖縄の基地反対派の老人に「この土人が」と、言ったことを思い出した。
私はとても容易にいろんなことを忘れてしまう。
だからこそこの本で改めて、いつ、誰が、何を言い、誰を庇い、誰を叩いたのかを思い出させてもらえて本当に良かった。
ドキュメンタリー「バッシング」を取り上げた2章は、自らあえてネット攻撃の対象になり、バッシング拡散の方法を突き止めていく。
小さな子どもが巨大な敵に、カメラ一つで仲間たちと立ち向かっていく冒険ものを読むような気持ちになった。
でも読み進むうちに心が冷たくなった。
斉加さんは弁護士に大量の懲戒請求を行った張本人のヘイトブログ「余命」の人に粘り強く会いに行き、話を聞く。
その内容は目を背けたくなるほど気持ち悪い。
朝鮮半島にルーツを持つ友人たちには読ませたくないと心から思った。
でも、それも私の弱さだ。
叩かれている誰かを知りながら目を背けることのできる立場で眉をひそめている間に、我が子の手にわたる教科書はじわじわと政治に介入されている。
昨日、公開中の映画「教育と愛国」も見てきた。
正直、地味な映画だと思う。
結論を誘導するような、悪が暴かれてスッキリするような作品ではない。
でも、問われているのはこちらの側なのだとずっと見ながら思っていた。
ぜひ、映画も多くの人に見て欲しい。
特に、多くの大阪の人に。
「職員室で話題にできない映画」と、観た後で言った人がいる。
だからこそ、学校や子供の近くにいる人にも見て欲しい。
あ、映画を見られた方も、この本はぜひおすすめです。
映画化にともなう舞台裏、編集でカットされた部分、使われた短い映像の裏にあるストーリーを3章で読めばさらに深まります。
映画を見る余裕のない方も、この本はぜひおすすめです。
「テレビなんて終わってるコンテンツ」と公言し、めっきり観なくなってた私は考えを改めた。
この大阪のテレビ局の中でこんなに戦っている人がいる。
背筋の伸びる一冊です。