リカ活動家の日々のこと

リカちゃん人形に着物を仕立てて着せる沼に浸かる活動家。

2022年に読んだ本たち

今年は自分としては戦前戦後を生きた人の本を読んだ1年でした。

このブログのおかげで辿れるのでまとめておく。


まず元旦に購入した朝井まかての「落葉」
明治天皇が江戸に入るところから始まる時代背景を緻密に調べて書かれた娯楽小説で、明治と大正の境目の1912年と言う年を身近に感じる一冊でした。


2月は須賀敦子の「遠い朝の本たち」と深町眞理子の「翻訳者の仕事部屋」。

1929年生まれの須賀敦子と1930年生まれの深町眞理子の回想に日本が戦争に向かっていく時代にも娘に「真理の子」と言う名前を付けた親がいて、豊かな外国の絵本を子どもに読ませた人もいたことを知る。


3月には大庭みな子の「津田梅子」と柚木麻子の「らんたん」を読んで日本の女性教育を必死に切り開いた女たちの群像に胸を熱くした。


5月、保存会の企画で伊藤千代子の映画「わが青春つきるとも」を観て「戦前の出版物展」も見る事が出来た。

出版物展の展示は忖度抜きにとても良かった。

伊藤千代子以外にも獄中で戦った女性たちのことを展示してあって、少し前に女子教育の先駆者たちの話をまとめて読んでいたからか(例えば千代子に英語を教えた土屋文明の妻テルは津田梅子の「英語塾」の卒業生だった)ヒューマニズムを育てる教育ということを考えた。


7月に上坂冬子の「東京ローズ」を読んだことがきっかけで文化学院に興味が出て10月に学院創立者西村伊作関連の本を2冊立て続けに読んだ。

彼のところには選挙に出馬する夫・与謝野鉄幹のためにお金を借りに与謝野晶子が訪れている。歌人としてのふたりは普通選挙を求める活動家でもあったのだと認識を新たにした。


さらにふとしたきっかけで手に取った三木清の「人生と読書」という文庫本で戦前にすごい哲学者がいたこと、その人が治安維持法で捕まって獄死していたことを知る。この人は西村伊作文化学院で講義もしている。


そして11月に東京まで見に行ったウィリアム・モリスの展覧会に刺激を受けてその著書「ユートピア」を読んで、上品なデザインの作家だと思っていた彼が社会変革家であり、ものすごい文才があることに度肝を抜かれた(芥川龍之介ウィリアム・モリスの人間としての側面に光をあてた卒論を書いたと言われているけれど関東大震災で焼失してしまっている)


100年以上前の人たちがすぐ隣にいるようなこの一年の読書体験を経て、12月は宮本百合子全集の彼女が14歳から22歳のころの日記を読んだ。

 

読みながら登場人物がリンクすることに驚く。


1917年の日記には「久米、芥川来訪。(中略)顔はかなりいい方だが、凄い」と百合子は書いている。


西村伊作と一緒に1921年文化学院を作った石井柏亭は百合子の「貧しき人々の群れ」の装丁をしているし、若かりし百合子とお茶をしている河崎なつも、その後文化学院で教えている。


若い百合子は辛辣だ。

こんな人に近くで観察されたらたら嫌だと思う。

でもとにかく、成長したい、何者かになりたい、身を立てたいというまっすぐさが日記から伝わってくる。


伊藤千代子にも感じた事だけど、当時の出版物や人の自伝を読む中で、若い天才作家と言われた百合子であっても、単独で立ち現れた訳ではないことを知る。


前段階に耕された文化があって、外国から持ち込まれた思想とそれを吸収する日本の人たちがいた。


どの時代も人は、書いて、読んで、誰かと繋がってきた。


古いものを更新しながら、より良くありたい人たちが歩いた道の途中に私たちも立っている。


次に続く人たちもいる。

 

その事実に背筋を伸ばして2023年も、読み、暮らしていきたいと思います。

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