本「マジカルグランマ」(柚木麻子著)

f:id:tototomoton:20220626183548j:image

柚木麻子さんは女たちの群像を書かせたら絶対面白い作品を生み出す人だ。

 

この前紹介した柚木さんの「らんたん」が、100年前の女たちのシスターフッドなら、こっちは現代版。

 

その上、ものすごい捻りが効いている

 

気をつけないとなという戒めも、

そうだよなぁという共感も、

自分はとらわれているという事実にも気づかせてくれる作品でした。

 

人間は若者とか老人とか男とか女とか主婦とか会社員とかの属性では計り知れない。

周りや属性が押し付けてくるマジックに埋もれるわけにはいかないのだと改めて感じた。

 

主人公の正子さんが全然「正しい人」ではないのがすごく良かった。

自分をアップデイトしながら、必死で生きようとするだけで「善い人」でも「賢い人」でもないことに救われた。

その人の身に起こることと、その人が「善い人」であることは実はあまり関係はない。

 

不公平も不条理もたくさん存在するからこそ、こういうたくましい女たちを作者は愛おしみながら書いているのだろうなぁ。

 

主人公の正子が好きな映画が「風と共に去りぬ」で、それでマジカルグランマである自分を認識するくだりは圧巻でした。

 

風と共に去りぬについては以前紹介したこちらもすごくお勧めです↓

tototomoton.hatenablog.com

 

 

 

 

漫画「吉祥寺少年歌劇」(町田粥 作)

f:id:tototomoton:20220621185609j:image

この漫画すごいと思う。

宝塚歌劇をベースで面白い漫画はある。

でも完全フィクションでこれを作れるのはすごい。

 

単純に男版タカラヅカって感じでもない。

 

青春群像がまぁ心地いい上に、画力がすごいのであらゆるジャンルのイケメンが揃うエンタメ要素も兼ね備えている。

 

たまたま本屋で手に取って初めて知った漫画家さんですが、他のも読んでみたい。

宝塚観たことない人(わたしのことですが)もオススメです!!!

映画「スープとイデオロギー」(ヤン ヨンヒ監督)

f:id:tototomoton:20220619173856j:image

久しぶりに大阪・十三の第七芸術劇場に。

年明けに「ボストン市庁舎」をみて以来なので半年も空いてしまった。

前宣伝見ながらこの半年に見逃した作品たくさんあるだろうなぁとちょっと悔しくなる。

それくらい、この映画館で観て後悔したことはない。

「主戦場」も「東京クルド」もとにかくドキュメンタリーで見たい作品の大半はここでやってる印象。

 

で、「スープとイデオロギー」です。

もうえらいことになりました。

 

途中から泣けて泣けて、泣き腫らした目がメガネとマスクでは全く隠しきれず、

すれ違う人がギョッとするのがわかるほどでした。

 

それ程自分と年齢の違わない、産まれた場所もそんなに違わない、ヤン ヨンヒ監督の背負ってきた、背負いながら記録してきたものの蓄積。

 

監督はそれを発表してきたために北朝鮮と言う国に兄弟や親せき、父親のお墓まであるのに、その国に入国を許されない。

自分の作品のある箇所が、かの国の家族に影響を与えるかもしれない。

それでも作品を撮り続けるという覚悟にせめてたくさんの人で劇場が満たされて欲しいと思う。

 

あと、急激に認知症が進む自分の父のことをものすごく観ながら考えた。

 

監督がお母さんの妄想を否定せず、撮り続けたこの作品は、どこか自分がこれから経験するであろう介護を予習させてもらっているような気持ちになった。

稀有で壮絶な家族であり、同じ時代に生きていると思えない背負うものの重さがある。

それでもなお、同時代に生きるオンナとして自分の映画だと思わされる。

 

国境を分けるイデオロギーという壮大なテーマと、スープという日常をこんなにもくっきりと目の前に展開されることは生まれて初めてだった。

 

多くの人に劇場で観てほしいです。

 

 

 

 

詩集「寸志」 (茨木のり子作)

f:id:tototomoton:20220612213537j:image

(あぁ、今日はしっかり話が通じる)と明るい気持ちで電話を切って2時間も経たずに「今日迎えに来てくれるのではないのか?」と父から電話がかかってくる。

 

こういうことに、少しずつ、慣れていかないといけないのだと思う。

 

でも「慣れる」ということが「一喜一憂しない」と同じだとしたらそれは、とても難しいことだ。

 

家族だからなおさら。

 

同じ人の詩を読んでも、こちらが響く作品はその時で変わる。

以前この詩集を読んで心に残ったのは「おちこぼれ」という詩だった記憶がある。

 

今回読んで心に残ったのは「道しるべ」という詩だった。

 

道しるべ

ーー黒田三郎氏にーー

 

昨日できたことが

今日はもうできない

あなたの書いた詩の二行

 

わたしはまだ昨日できたことが

今日も同じようにできている

けれどいつか通りすぎるのでしょう その地点を

 

たちどまりきっと思い出すのでしょう

あなたの静かなほほえみを

男の哀しみと いきものの過ぎゆく迅さを

 

だれもが通って行った道

だれもが通って行く道

だれもが自分だけは別と思いながら行く道

 

漫画「マッドジャーマンズ」(ビルギット・ヴァイエ作)

f:id:tototomoton:20220606065248j:image

かつて東ドイツに、モザンビークから多くの若者が「社会主義の兄弟国」という理由で働きに行っていたことを、この作品で始めて知った。

 

1989年のドイツのベルリンの壁の崩壊した時、私はまだ子どもだった。

それでもなんとなく海を渡ってくるポジティブな風があった。

日本でも歓迎と感動の報道がされていたことを思いだす。

 

でもそんな前向きな変化のもとでも、その地面の上では、当然のことだけど社会の大きな変化の暴風で、人生を葉っぱのように吹き飛ばされた人もいる。

 

この漫画はモザンビークからドイツに渡った3人の人物の物語だけれど、その人たちの中に、多くの人の証言を再構築し盛り込んでいる。

 

ドイツ生まれで子ども時代をウガンダケニアで過ごした漫画家の画力とか色や構成のセンスの良さにも驚く。

f:id:tototomoton:20220610102553j:image

 

この漫画が教えてくれたことは多い。

現実はいつでも私の想像力を遥かに超えていく。

だからこそ、取り込んでいく作業を忘れずにいたいと思う。

 

本「米国人博士、大阪で主婦になる」(トレイシー・スレーター著)

f:id:tototomoton:20220607182046j:image

本というのは不思議な存在だと思う。

読むタイミングをあちらの方から待っていて、目の前に登場してくるような本がある。

 

この本は、たまたま読書家の知人の本棚で見つけて、手に取った。

興味を惹かれたので借りてきて、読み始めた。

 

アメリカのボストン出身のユダヤ系のインテリ女性が、仕事で出会った日本人男性と恋に落ち、主婦になる。

 

言ってしまえば、そういうストーリー。

 

恋愛に興味津々の人には、ドラマのように出会う2人のエピソードにワクワクするだろうし、妊活経験のある人は、2人の経験する日本での妊活経験に共感が押し寄せると思う。

 

アメリカの都会と、日本の大阪。

どちらも知っているので、著者の感じる違和感や心地よさがとてもよく分かった。

 

そして、ここまで楽しく読みながらも私は、著者の義父の手が震えていることが気になっていた。

 

介護の章になって、この人が自分の父親と同じパーキンソン症候群だと知ることになる。

 

先月救急車で運ばれて、コロナ禍で面会も叶わない私は、病院で付き添う著者の描写に文字通り胸が潰れるような気持ちになった。

 

環境が変わって父のせん妄は酷くなってきた。

 

昨日、電話で話した主治医の先生が「僕が若すぎるからか、学生と思われたみたいで。診察を拒否された時は、ちょっと悲しかったです」と言った時、「本当の父親はそんな事を言う人間ではないんです」と言いながら切なさが押し寄せた。

 

孫にだって、敬意を持って意見を聞く人が、年齢だけで人を判断するはずがない。

それなのに父は今とても辛い疑心暗鬼の世界で生きている。

 

「もちろんです。本人の責任ではなく、病気です」と、穏やかにキッパリ言い切ってくれる主治医の先生の言葉に、とても救われた。

 

とにかくこの本が、万人に響くかどうかは冷静には判断できないけれど、今の私にとっては、思いっきり泣ける誘発剤になりました。

 

こんな読書もあるんだなぁ。

 

本「Empowerment エンパワーメント」大崎麻子著

f:id:tototomoton:20220602213257j:image

 

 

エンパワーメントと言う言葉をよく聞くようになった。

最近、語源に興味があるのでまずは単語の意味を考えてみる。

単語の頭にくるENは「~する」という意味なのでパワーにエンがつくことで「力にする」「力をつける」という意味。

で、この単語は主に女性などの社会のマイノリティーや周辺に置かれてきた人たちに使われることの多いワード。

 

とはいえ、私はこの言葉の定義についてあんまり深く考えたことが無かったので、この本で整理がついた。

この本の中で大崎さんは 

 

①健康

②教育

③生計手段・経済力

④社会・政治への参画(参加じゃなく、もっと主体的な参画)

 

という4つの要素を身につけるプロセスが「エンパワーメント」だと書いている。

 

エンパワーメントとは、単に「自己責任で生きる」ための術を身につけることではなく、地域や社会と繋がり、色々な人たちと「助け合いながら生きる」「より良い社会を築いていく」ための術を身につけることを提唱する考え方です。

(32ページより)

 

あと、日本のジェンダーギャップ指数が低く、世界でも地を這うレベルであることはよく言われているけれど、この国で生きているのでなんとなく「そらそうやろな」と漠然と受け止めてしまっていた。

 

だけど、分野別で見ると新鮮だった。

 

ギャップ指数なので言われてみれば当然ですが男性を1としたときに女性はどれくらいかを数値化しているのがこの指数。

例えば日本は「健康」とか「教育」の分野は上位(そんなに男女で差がない)

どの分野が足を引っ張っているかといえば、「経済」と「政治」の分野。

 

そして年々日本の順位が下がっている背景には、この間、他国がギャップを縮めてきていることも改めて知れました。

 

サブタイトルは「働くミレニアル女子が身につけたい力」とありますが、別に世代を超えて色んな人が読めば気づきがある一冊。

 

おススメです。