本「必死のパッチ」(桂雀々著)

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以前に何かの書評で気になってたことを思い出して借りてきた。

必死のパッチ」とは大阪弁でいうところの「必死のさらに上」を意味する言葉で「必死」と「死に物狂い」を足して、さらに「がむしゃら」をかけたようなものだ。

(本書5P「プロローグ」より) 

 

ほんとにびっくりした!

あっという間に(というか途中でやめることができなくて)一気に読み終わった。

「じゃりン子ちえ」の男の子シリアス版、最近でいえばブレディみかこさんの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の昭和大阪バージョンと言うか…。

 

でも雀々さんは多分、自分の想像を絶する大変やった子ども時代を知って、読者の皆さんも頑張れ」と言いたくてこれを書いたわけではないと思う。

 

「人間って本当にどうしようもなくて、情けない。でも、あったかくて、許しあえて、繋がれる」ということを、教えてくれる一冊だと思う。

 

酷い両親についての恨み節ではなく、助けてくれた近所の人や、友達や、大好きだった師匠の事を綴りたくて、なによりも自分を救ってくれた落語のすごさを知ってほしくて書いた気がする。

 

それだけに終盤の師匠の登場シーンは、その後の展開を知ってしまっているだけに何とも言えない気持ちになる(あえて書きません)

 でも、それもひっくるめて必死のパッチで生きている雀々さんの渾身の一冊。

是非この夏の一冊に絶賛お薦めします!

本「話すための英語力」(鳥飼玖美子著)

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前回の投稿から普通に一ヵ月空いてしまった…。

 

ということで、久々にご紹介するのはこちらの鳥飼さんの新書です。

話すためのコツと言う意味でも色々と参考になる実用書です(たとえば失礼にならない反論の仕方とか)が、さすがと唸るのはやっぱり興味を掻き立てるエピソードの数々。

 

一つだけ紹介すると、例えばオバマ大統領の広島訪問時のスピーチの一文を各紙がどう和訳したかの箇所はすごく面白かった。

 

2016年に現職大統領として初めて広島を訪問したオバマ大統領は「謝罪をしない」ことは事前に明らかにされていたそうです。

だからこそスピーチでもアメリカが原爆を投下した、とは言わない。

オバマ大統領らしい詩的なこんな一文です。

 

Seventy-one years ago, on a bright cloudless morning, death fell from the sky and the world was changed. 

「71年前の朝、雲一つない晴れ渡った空から死が降ってきて、世界は変わってしまった(私の拙訳です)」

 

 

それを各紙と鳥飼さん本人がそれぞれ訳しているわけですが、鳥飼さんはまずfellという単語を「落ちた」「振った」「降りた」のどれにするかで異なるニュアンスを指摘します。

 

「死が空から降り」は、何か自然現象でもあるかのような表現で、その意味では発言者の意図を最も忠実に反映しているのかもしれません。「死が空から落ちてきた」と私が訳したのは、原爆が落とされたことを踏まえており共同通信社の日本語訳と同じです。(中略)どういう日本語を選ぶと、原爆を投下された側の思いが滲み出るか、いや、そのような感情は交えずに、アメリカ大統領の意図の沿い原文に忠実に訳すべきか、という判断を翻訳者はしなければなりません。

(本書122ページより)

もちろん和訳に正解はありませんが、簡単な単語程侮れないし、軽く扱ってはいけないと痛感する一文でした。

もうひとつ鳥飼さんが注目した単語も中学一年生で習う単語=changeです。

the world was changedと受け身になっている。

The world changed.「世界は変わった」でも文法的には間違いではない。

でも受け身にすることでwas changed by の後ろに本来続くであろう(あえてオバマ大統領は言わなかった)原爆を落としたアメリカの存在が見えてくる。

だとしたら日本語にするとき、「世界は変わった」でいいのか?

 

(だから英語ってややこしい)といううめきも聞こえてきそうな話ですが、私に言わせればだから英語って面白い。

私同様に英語沼の心地よさを知っている方にはお勧めの一冊です。

 

あ、以前にも鳥飼さんの新書を紹介してました。

こちらもおススメです↓

tototomoton.hatenablog.com

 

Netflix映画「モキシー~私たちのムーブメント」

このところ腰痛で寝たきりだったこともあり、Netflixで見逃していたドラマシリーズを一気に見ておりました。

まずは、「クイーンズ・ギャンビット」

 

公開された当初にものすごく話題になっていたのも納得の面白さでした。

チェスを知らなくても楽しめるし、ファッションもかわいい。

何よりも60-70年代のアメリカの哀しい感じとを直接的に描かないのに、主人公や母親に体現させるその匙加減が絶妙で、すごいと思う。

 

次に「ジニー&ジョージア

これは現代版のギルモアガールズって感じなんですが、まぁ現代版だけあってそんなにおとぎ話風味でもなく、なかなか引っ張る終わり方をしたのでシリーズの続編が待ち遠しい。

 

前置きが長くなりましたが、昨日見て意外なほど面白かったのが映画「モキシー」!

 

これについてはライターの野中モモさんが書かれてる映画評がものすごく的を得てるので貼り付けておきます。

www.gqjapan.jp

 

観終わって我が家のティーンズと一緒に絶対もう一度観ようと思った。

 

単純すぎるとか、ステレオタイプ過ぎるとか思う部分があったとしても、女の子のシスターフッドなお話はもっともっと作られていい。

「今いる場所のルールが当たり前ではないよ」ということを次の世代に伝えることは、ちょっと先に生まれてる大人の責任。

 

お母さん役をしている女優さんが監督でもあるこの作品。

とにかくめっちゃ若い女の子への応援歌のような映画です。

あと、すてきな若い役者さんがたくさん出てますが、やっぱり私のイチオシはニコ・ヒラガ!!!

 

サンフランシスコ生まれの日系3世になるのかな?

彼は「ブックスマート」にも出てたんですが、本当にキュート。

 

冒頭の背比べをするところから、どんどん素敵になってく彼を好きにならないではいられないのです。

ほんともっといろいろ出てほしいなぁ。

 

 

 

映画「オフィシャル・シークレット」とイラク戦争

実は先月懲りずにまた字幕トライアルを受けました。

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お題の映画がこちらのイギリス映画「オフィシャル・シークレット」

 

2003年のイラク戦争開戦直前にアメリカとイギリス諜報部の汚い裏工作を内部告発したGCHQ(英政府情報本部)の職員キャサリン・ガンの裁判を丁寧に取材して作られたのがこの映画です。

主人公はキーナ・ナイトレイ

以前ビッグ・イッシューのインタビューで「パイレーツ・オブ・カリビアン」に大抜擢されて超有名になった時でも「撮影中も実家に帰ると兄たちと反戦デモにでかけた」と語ってたキーナ。

キャサリン・ガンの事件を知っていたかと聞かれた彼女は

政治的な意識は強いほうですが、この事件のことは知りませんでした。作品内でも触れていますが、当時米国では全く報道されなかったのです。記憶に残っていないこの事件の重要な出来事に大きな興味を抱き、出演を決めました。社会に大きな影響を与えた事件で、忘れてはいけないものだと思います。実際、私は事件を知らなかったのですから。

(「オフィシャル・シークレット」パンフレットから引用)

 と、語っている。

 

この「政治的意識は強いほうです」と言い切る確立された人格と、にじみ出る演者としての自負心!

 

実際、あのイラク戦争から20年も経ってから作られた、この映画にしにくいテーマ(正直言って)の作品を彼女の演技が支えていると思う。

 

まぁこれはキーナに限らず、あの「ハリー・ポッター」のヴォルデモート卿役のレイフ・ファインズやら、「ノッティングヒルの恋人」でヒュー・グラントの同居人役だったリス・エヴァンズ、他にも続々と今をときめく名優がこういう骨太作品にしっかり出演するところも含め、イギリス映画って層が厚いなと改めて感じます。

 

で、この作品、トライアルとしては事実がベースなので下調べが途方もなく必要で、英語力より調査力と裏付け力が求められる作品。

 

が!!当時友人たちと私は大阪城公園でこんな人文字を作っていたわけです。

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イギリスのビッグ・べンの下での史上最大の反戦デモの映像も映画で出てきますが、あの写真に励まされたあの頃の記憶がよみがえりました。

 

あのちょうど同じころにほとんど同世代の女性がイギリスでこんな切羽詰まった状況で内部告発に踏み切っていたことは私も知りませんでした。

 

でもイラク関連の本だけでも家にはこんなにあって資料には事欠かない。

 

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まぁ当時の経緯を知りすぎていたために「ネオコン」をそのまま説明もなしに字幕に使ってしまうというトライアルとしては痛恨のミス(20年後の日本の視聴者でネオコンがすんなりわかる人の比率は多くないよねぇ)をしてしまった訳ですが…。

 

それはさておき改めて米英のあの国連決議のないイラク攻撃がどれほど無法でデタラメな戦争だったかが骨身に染みる作品です。

 

同時に大国に盗聴されて「賛成に回れ」と脅されても屈しなかった安保理事国の決して大きいとは言えない国々の踏ん張りを初めて知ることができました。

 

最後にパンフレットの表紙がめちゃくちゃ秀逸なので載せておきます。

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真実は常に戦争の最初の犠牲者になる

 

これ、すごい良い作品なのにコロナ禍であんまり日本で観れてる人が少なそうなのが残念過ぎる。

是非機会があればご覧ください。

 

 

 

本「ライブ!スウェーデンの中学校」宇野幹雄著

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ちょっと機会があって、この本を読みました。

日本人で20年以上スウェーデンの中学校の先生をしている方がいることも驚きでしたが、その授業内容やシステムや子どもたちの様子が「ライブ!」とタイトルに付くだけあってかなり詳しく知ることができます。

 

最近子どもの通う中学校が毎朝8時から当番の風紀委員の生徒が校門に立って校則に違反している生徒に「風紀きっぷ」を渡しているということを知りました。

生徒に生徒を取り締まらせる。

それが生徒会活動の一環…。

お腹の底の方がどす黒い影に侵食されるような何とも言えない気持ちになります。

 

さて、海の向こうのスウェーデンでは子どもたちは「国会」と言う名の「生徒会」のような活動があって、三つの委員会活動があるそうです。

どの委員会もかなり主体的。

 

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それぞれの活動がどれもかなり面白く、「授業委員会」なんて宿題やテストのスケジュールに偏りがないかチェックしたり、生徒側からの授業に対する不満点を教師に伝え授業計画の再考をうながしたりするらしい!!

 

「イジメをなくす委員会」があるということは、当然スウェーデンにもいじめはある。

いくら少人数でも、いくら教育水準が高くても、福祉国家でも、学校にいじめはある。

でも一番印象に残ったのはこの委員会の生徒ケアチームは「イジメをする生徒」に対して連携して話を聞き、問題解決に向かうということ。

問題を抱えているのは「イジメる側」だという当たり前の認識の上でしか、この問題は良い方向に向かわないと心底思う。

 

なんだか読んでいて気持ちの良くなる、風通しのよいシステムが多い。

 

かと思えば、意外に会議が大好きな国民性だったりして、面白い職員会議のやり方まで出てきて興味深い。

 

同時に、アル中や家庭内暴力、薬物中毒の問題もしっかり取り上げていて、現場の教師の視点から書かれているので福祉国家バラ色」って話ではないところも、そのしんどさも含め、どう子どもたちの学校での学びに生かすのかという視点もとても読み応えがあった。

 

教育関係者はもちろん、そうじゃなくても、結構楽しめる本です。

それにしても表紙の写真もそうですが、学校の建物が素敵すぎる。

何なんだ、この北欧のデザイン力は!!!

 

 

 

たまにはU-NEXTのおすすめ映画

完全にNetflixばっかりに偏ってるのでU-NEXTはもう解約しようと思って、久々にログインしたら衝撃的な品ぞろえ!!!

取り合えず、すでに見ていておすすめなやつをお知らせします(誰にだ?)

 

追加で払っても観たいという人にはまず韓国からこの2作品↓

animoproduce.co.jp

 

klockworx-asia.com

あと、次の2作品はどちらも若者のしんどさが胸に迫りますが、知っておかないといけない現実でもあり、なによりも映像として素晴らしいのでほんっとに観てほしい↓

papicha-movie.com

 

bitters.co.jp

 

あと、以前にブログでも紹介したこれも↓

tototomoton.hatenablog.com

 

tototomoton.hatenablog.com

 

と、ここまで書いたらお判りでしょうが、もうすこし契約の解約を見合わせようかと思います(笑)

皆さんのおすすめも知りたいです。

 

本「女の子はどう生きるか」(上野千鶴子著)

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ベストセラー「君たちはどう生きるか」が男の子向けの本で、有名なルソーの書いた教育書「エミール」にはもっともなことがたくさん書いてあるが、最後まで読むと「以上述べてきたことは女の子にはあてはまらない」と書いてあるという。

 

女の子は、将来の夫となる男を支えるように育てなさい、とルソーは言いました。そんなバカな!と私は思いました(前書きより引用) 

 

 私はぶっちゃけどっちも読んでないので上野先生のように衝撃は受けないのですが、たまたま数日前に読んだ「スゴ母列伝」で

 

結論から言えば、モンテッソーリは我が子を自分の手で育てることができなかった女性だ。 さりとて、教育学の名著「エミール」をものしながら我が子を次々と孤児院の前に捨ててきたジャン=ジャック・ルソーのように無責任だったわけでもない。

『スゴ母列伝』130ページより引用

 と、読んだばかりだったので最近2回も遭遇したルソーさんへの反感が生まれ、読み進めました。

 

以前に私と同世代の雨宮処凛さんが著書で上野先生と共感できない部分をドンピシャに書いていたけれど、私も上野千鶴子さんは正直好みではない。

 

今回もこの箇所↓には違和感を感じた。

 

きっと彼の家庭では「家事育児は女の仕事」、つまりお母さんだけがやっているんでしょう。これから先は絶滅していく人種です。そういう男子にはこう言ってやりましょう。「このぐらいできないと、結婚できないよ。アンタの親の世代とは違うんだから」(28ページより引用)

 

(そういうとこだぞ)って正直思う。

 

言いたいことをいうときに、関係ないことを出してくるのが気持ち悪い。

結婚するのがいいわけじゃないと他のところで散々書いておきながら、結婚はできた方が良いと考えているのか、ただ相手の痛いところを突きたいだけなのか分からないけど、人は個として生きていく前提にシンプルに立てばいいのにと思う。

 

でも私には押しつけがましい物言いも、ぐるっと数世代若返って今の10代には新鮮なのかもしれない。

 

そしてネガティブな事を書きましたが、学者さんなのでデータで回答している部分はかなり読み応えがありました。

 

今の税金の制度が女性を「そこそこ働いて、家のこともしてくれる」都合の良い存在として閉じ込める制度設計であることや、財界のおっさんと政界のおっさんは仲良しだということも改めて数字や経過をたどるのは興味深かった。

 

巻末に2019年の東京大学での話題になった祝辞も全文載っています。

 

我が家のティーンにも「読んだら?」勧めてみましたが、「あ、大丈夫です」と言われました。(何が?!)

 

いつかどこかで出会えるといいね、フェミニズムに。

そういう意味でも次世代の女の子へのエールはたくさん感じる本でした。