大阪在住者としてはこの船場商人の物語はどこかで読もうと思っていた。
長い間本棚で眠らせていたのに、ふと手に取ってページを開いた途端、大阪の商売人魂が覚醒したように流れ込んできた。
初めて書いた小説なのに、すでに貫禄すらある山崎豊子さんの筆の力に一気に読み終えました。
戦前戦後の時代を背景に商売人の親子が必死で暖簾を守り抜く話かと思いきや、むしろ逆で、この2人の営みを通して時代を浮かび上がらせるスケールのデカさ。
彼女の本編と「あとがき」を良い気分で読み終えたのに、最後に男性評論家が
「女流作家には珍しいねばりとしんの強さ」
と、クソどーでも良い「解説」を書いていてイラッとする。
誰やコイツ?と調べたら河盛好蔵というフランス文学者らしい。
だいたい女の作家を「女流作家」と言う男にろくな奴はいませんがwikiによると「新しい歴史教科書をつくる会」賛同者だと。
まぁもう亡くなられているので、悪口はこのくらいにしておきます。
考えてみれば何十年経っても古びない山崎豊子さんの文章と一緒に、亡くなってからも自分のこんな前時代的な一文がさらされてしまうこの人は気の毒ですらある。
ちなみに装画は芹沢銈介氏の染色です。
こっちも全く古びないなぁ。