リカ活動家の日々のこと

リカちゃん人形に着物を仕立てて着せる沼に浸かる活動家。

本「女性が映画をつくるということ」高野悦子著

何年も前に誰かからもらってずっと読んでいなかった

「女性が映画をつくるということ」(朝日文庫 高野悦子著)をやっと読み終えた。

https://www.amazon.co.jp/女性が映画をつくるということ-朝日文庫-高野-悦子/dp/4022642548

 

正直、そこまで期待してなかったのに読み始めた途端

(こんな面白い人がいたのか!)とワクワクが止まらなかった。

 

著者の高野悦子さんが東京にある岩波ホールの支配人だったことはなんとなく知っていたけれど、まさかここまでドラマチックな人生だったとは。(残念ながら2013年にお亡くなりになった)

 

彼女は1929年旧満州生まれ。敗戦で16歳の時に引き揚げてきて、戦後は日本女子大を卒業し終戦から7年後には東宝に入社している。映画監督になりたいけれど、日本では女が映画監督になる道がないことを知って29歳のときパリの高等映画学院に留学することを決意する。

おおかたの人は私が29歳にもなってフランス語を覚え、大学に入るのはたいへんだと心配して引き留めようとする。父も、会社勤めをした者が、また学生生活に戻るのは無理ではないかと難色を示した。

そんな父に私は、敗戦の時にすべての財産は消え失せたけれど、身に着けた力だけは残ったではないか、その力をこの際、磨いてみたいから私は勉強する。応援してほしい、と頼んだ。 

 

その上フランスに行ったものの、フランスですら監督科に女性は彼女ひとり。

それでも3年かけて彼女は卒業し、日本に帰ってきてシナリオを書いて、やっと映画を作ろうとなったら大映にシナリオを盗作され、上映差し止め訴訟までやって著作権を取り返している。

結局彼女は1968年に開業した岩波ホールの支配人になり、フランス時代の人脈と映画への愛でその後の人生を「映画を見せる人」として生きている。

 

「映画」と「女性」という二つのテーマを人生かけて貫いた人。

 

この一冊には彼女が世界を飛び回って出会った映画や監督のエピソードが満載で、あれもこれも観たくなる。

でも同時にその膨大な数に途方に暮れる。

 

彼女の紹介する知らない作品の中で少し気になるエピソードがあった。

もっとも残念だったのは、アメリカ映画の「デランシー交差点」(1988)に関してである。ワーナーブラザーズの日本支社が公開の可能性なしと見切りをつけ、フィルムを本国へ送り返す直前に私はこの映画を観て女性映画週間での上映を即座に決めた。(中略)ところが、映画祭で3回上映したあと、この作品はアメリカに戻されてしまった。岩波ホールのような小さな劇場で手間暇かけて長期ロードショーしてもどうせ大したことはない。ビデオ商品の方に回す、というのがアメリカ本社の考えだそうである。日頃、アメリカの大手映画会社とは無縁でいるものの、その想像以上のコマーシャリズムに驚き、また残念でもあった。

たった3回の上映のために日本語字幕を作った人がいたことにちょっと衝撃を受ける。

 

でも、一番気になったのは、この作品で出てくる登場人物のひとりがピクルス売りの青年だというくだり。

(あれ、この前にたような恋愛映画みたぞ。。。)と思って調べてみたら

maggiesplan.jp

出てきたよ!ピクルス作って売ってる青年!!!

しかも話の筋も結構近い。

もしかしてと調べたら監督は女性でレベッカ·ミラー。

(ミーハーなので書いちゃいますが、お父さんはあのアーサー·ミラー。マリリン·モンローの元結婚相手)

きっとレベッカ·ミラーは「デランシー交差点」を観てて、この作品を作ったんだろうな。

女の人の描き方が多様で、優しくて、たくましくて、「マギーズプラン」は好きな映画です。

高野さんが生きておられて、この作品をみたらどんな感想をもっただろう。

 

この人が文字通り人生かけて「女性監督」とその作品を応援してて来た先に、世界中で活躍する女性監督がいて、いい映画がたくさんできてる。

 

観る側の「オンナ」も頑張らないとなと思った一冊でした。