前から気になっていたこの漫画。
原作の「時代の証言者 伊藤千代子」(藤田廣登著)をかなり以前に読んだ記憶があるけど、私は人一倍忘却力に自信があるので新鮮な気持ちで読みました。
戦前に日本共産党に入り、3.15事件で検挙され、獄中で夫の浅野晃にまで裏切られても志を曲げず最後は心を病んで病院に送られ24歳の若さで肺炎で亡くなった伊藤千代子。
若い頃に彼女の人生を知った時は悲しい辛い側面ばかりを心に留めた記憶がある。
今回ワタナベ・コウさんの漫画で蘇った伊藤千代子はとてもしなやかで強かった。
1922年、ちょうど今から100年前に千代子は小学校の代用教員になりながら英語の勉強を続け、友人にこんな手紙を書いている。
その年には津田梅子の開校した女子英学塾を受験するも不合格になり(この時千代子に英語を教えたのが女子英学塾出身の土屋テル子であり、歌人・土屋文明の妻だった)翌年再受験するも、英会話が苦手な千代子は合格せず「もう諦めろ」と家族から見合いをすすめられるが、この時も土屋テル子が保証人になり仙台のミッションスクールに進学している。
獄中でもどんどん変節していく自分の夫の浅野を含めた男性同志たち。
そんな中でも「男中心の主張にだまされるな」と女性同志たちと手紙を回しながら獄中闘争を続けた千代子。
あの時代の女たちのシスターフッドを感じさせられるものを最近よく読んでいるからか、原作を読んだ時よりも前向きな気持ちでこの漫画を読みました。
女に選挙権がなかった時代、いったい世の中はこんなふうに不公平なままで続いていって良いのかを考え続けた千代子の24年の生涯を想い、100年後に主権者として生きている自分の足元を考える一冊でした。
皆様も是非!
国際婦人デーの日に。