戦前に治安維持法で24歳で命を奪われた伊藤千代子の生涯を描いた「わが青春つきるとも」を観てきた。
正直言って前半は、むかし学校で見せられた教育映画(と言うジャンルがあるかは知りませんが)的な印象で、言ってしまえば説教くさい演出に残念な意味でドキドキしましたが、後半になるにつれて主演女優さんや同志役の若い女優さんたちの熱演と、事実の重みが迫ってくる作品でした。
でも、この素材を今に蘇るものにするなら、もう少し演出は、、、と感じた。
「金子文子と朴烈」とか「マルモイ」とか特高警察の役を韓国の俳優さんが演じてても、100年前の話でも迫って来て映像としての力を感じたのになぁと、ちょっと残念に思いつつ、会場で同時開催されていた保存会の展示を見る。
この展示、一見地味ですがかなり見応えがありました!
伊藤千代子と一緒に投獄されていた原菊枝が2年間の獄中生活を綴った「女子党員獄中記」は手にとってパラパラ見せてもらえます。
「千代子さんのこと」のところでは、トイレの中に文書を捨てる映画のシーンがあったけど、その前に特高警察に捕まった千代子が電車で移動するときに着物の下で文書を細かくちぎって少しずつ捨てる描写が超スリリングに綴られていてドキドキする。看守のことも「ゴリラ看守」とか書いてて口が悪くてニヤニヤする。
他にも原菊枝の入っていた独房が金子文子と一緒に捕まった人の部屋だったことや、金子文子たち「少し前の主義者」の時代は昼間の体操も庭を掃除してから「どうぞ」と送り出されてお姫様の様な扱いだったし、お芝居を見に抜け出したりもしてたらしいと書いてから、1920年代も終わりかけの自分たちの時代になると思想犯も大衆化して数もどんどん増えてきたから扱いが全然違うとえらい内情をぶっちゃけている。
映画見ながら金子文子を思い出したばかりだったから、当時の伏字の本に名前が出てきてビックリした!
小林多喜二にしろ、伊藤千代子にしろ、本人の資質ももちろんあれど、1人で生まれた英雄ではない。
100年前に生き、大正デモクラシーや普通選挙(当時は男子だけだったとしても)の実現に沸いた時代の空気の中で伊藤千代子は教育を受けた。
仲間と学んで矛盾に怒る人間性は作られた。
あの時代にそう言う群像があって闘いがあったことを、「戦前の民主的出版物を保存する会(保存会)」のアーカイブは教えてくれる。
そしてこのコレクションが市井の人の会費や寄贈で成り立っていることが改めてすごいと思う。
映画と一緒にこの展示を大阪では見れたのはラッキーでした。
映画はこれから大阪でも全国でも上映会が予定されています。
辛口なことを書きましたが、伊藤千代子の生涯や彼女と同時時代に生きた、投票はできなくても政治を変えたいと願った戦前の女たちの物語はもっと知られてほしい。
漫画もおススメです。
映画「マルモイ」と「金子文子と朴烈」も。