リカ活動家の日々のこと

リカちゃん人形に着物を仕立てて着せる沼に浸かる活動家。

風よあらしよ(村山由佳著)

2021年年始最初に読み終わったのはこちら↓

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651ページもあるハリポタレベルの分厚さの本なので、お正月でもないと読み終えられないだろうなと思って寝かしておりましたが、読み始めたら止まらずあっという間に読み終わりました。

 

関東大震災があったのは1923年なのでもうすぐ100年くらい前のことになってしまうけれど、そのどさくさにまぎれて殺されたアナーキスト大杉栄伊藤野枝の恋愛小説。

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上の写真にあるように主要な人物だけでなく、登場人物もかなりいる。

それぞれの視点で重層的に書かれてている。

 

私は映画でも漫画でも小説でも好みかどうかを見極めるポイントは2つある。

一つは主役だけの都合で話が進まずに、わき役が丁寧に書かれていること。

そしてもう一つは誠実に取材され、細部まで気を抜いていないこと。
その意味でも、著者の村山由佳さんは相当いろんな史実も調べて渾身の作品を生み出したなぁと思う。

 

若い頃に伊藤野枝や神近市子の評伝みたいなものを読んだことがあったので、実は大杉栄には嫌悪感があった。

 

まぁ、これを読んだところで別に好感を持ったりはしないけど(やっぱり全然好きじゃなかった)それでも100年前の女性に選挙権もなく、貧しい家庭の女性が犬同然に扱われていた時代に、「対等の自由恋愛」を掲げ、女性をその中身で評価する男というのは、ある種の女性にとって魅力的だったんだろうなぁと推測できる。

 

ひょろひょろしたインテリが世を憂えて自殺したり斜に構えたりする中で、まっすぐやりたい放題で、牢屋に入るたびに言語を一つ習得して出てくる大杉栄が男女問わず人を魅了したのも、そういう時代だったのだなと思う。

 

そのくせ、吃音がひどくカ行は必ずどもったという彼が、あれほど望んだ「革命」という言葉を一度もすんなり言えなかったというエピソードは、別に大杉栄を好きじゃない私でもちょっとグッときてしまう。

 

冒頭のシーンがうまく書かれているため、国家権力が牙をむく中でこれほど無邪気に無防備にしていていいのかと読者の方が気をもむ設定にしてあって、伊藤野枝が幼少期からぐんぐん伸びていく女学生の時代の勢いも圧巻でした。

途中の愛憎ドロドロ昼ドラ展開のところは個人的には正直ダレたけど、終盤への持って行き方もさすがでした。

歴史を知るには人の人生を絡める方がしみ込むなといつも思う。

読み応えのある一冊なのでおススメです。