数年前にたまたま無料でHuluかNetflixで同じタイトルの映画を観た記憶があって、本屋さんで原作本を買ってみた。
へレーン・ハンフさんが著者ではなく編者となっているのはアメリカ人の彼女とロンドンの本屋の店員さんたちの1949年から1969年までの20年間に及ぶ実際の書簡を編集したものだから。
この本が1970年に出版されるや否や、世界中の本好きと書店好きが熱狂し、さらに映画にもなったというのもうなずけるすごく暖かい気持ちになる一冊です。
戦後間もないイギリスはまだ配給制でそれほど物が豊かに手に入らない時代に、せっせとアメリカからドルと一緒にプレゼントを贈るイギリス大好きなアメリカ女性へレーン。
「日本やドイツにお金を使うくらいならあなたたちを支援すべきよ」的なことも書いてあって日本人としてはちょっと「おい!!」って感じたりもしますが(笑)その意味でも当時のアメリカのインテリ女性がどんな感覚だったのか分かって興味深い。
そしてちょっとうれしい発見がこちら。
1955年9月の手紙でへレーンが
ド・トックビルの「アメリカ紀行」在庫あります?誰か私のトックビルの本を持って行っちゃって、返してくれないのです。(文庫本138ぺージより引用)
と、書いてあったところでおおぉ!と思う。
以前に宇野重規さんの本を紹介した時に私の推しになったトックビルが出てきた!!!↓
さらに5年後にヘレーンが
ムッシュ・ド・トックビルよりよろしくとのことで、無事にアメリカに到着した旨、何卒知らせてあげてくれたまえ、とおっしゃっています。(中略)彼の言ったことはすべて本当で、特にアメリカを牛耳っている弁護士たちについて書いていることはまさに真実だからです。(文庫本177ページより引用)
と書いてる箇所にぬぉおおと思う。
5年間!!その間、忘れずに探し出し、異国の読者に送る本屋さんのプロ根性。
正直私はトックビル以外は書かれてる固有名詞は全然知らなかったですが、それでも面白い!
さらに日本人の私たちが幸運なのはこれをたった2年で江藤淳さんが翻訳してくれたこと!
戦後ロックフェラー財団から留学し、イギリス文学にも造詣の深いこの人が、人生で数冊だけ翻訳した中の一冊がこの本です。
途中まで礼儀正しい英国紳士の本屋さんの言葉が砕けてくるところとか、絶妙な訳で自然に読み進められるようにしてあって、正直50年近くも前の翻訳だとは到底思えない神業です。
そして冒頭で紹介した映画の方も後で調べたら日本では劇場公開されてなくてあまり知られていないですが、先日アカデミー賞をとったアンソニー・ホプキンスと私の好きな女優さんジュディ・リンチも出ている!!!
活字はちょっと目が疲れるという方は、こちらだけでもどうでしょうか?