先日「大阪民報」紙上でお元気そうなインタビューを読んだところで、タイムリーにまちライブラリーで発見したので借りてみました。
大阪市立盲学校の元教員である藤野高明さんが様々なところに書かれた文章をまとめた一冊。
戦後、弟と遊んでいた時に見つけた不発弾が爆発し、5歳の弟が死に、8歳の藤野さんは両目両手を奪われた。
両手がない藤野さんには指がないから点字も読めない。
そのことを理由に援助されるはずの教育から「免除」され、生きてきた青春期。
並大抵の事ではないその人生を、19歳の時点字を唇で読む「触読」に出会い、人の繋がりを手繰り寄せ、盲学校の世界史の教師として切り開いてきた藤野さん。
1番すごいのは「本人の努力はもちろんです。でも、周りの助けとシステムが大事」と言い切る謙虚さ。
「歴史は人が好きでないと面白くない」と学ぶことの意味と楽しさを誰よりも実感して、学び続けてきた人の誠実さが文章からも滲んでくる。
たくさんの素敵な人が登場し、たくさんの楽しいことが語られる「楽しく生きる」というタイトル通りの本です。
でも、同時に75歳になった出版当時(2014年)も「かつて自分から教育を遠ざけた現場の人たちを許せない」と、率直に書いておられる。
希望を持つとは今日よりも明日は良くなると思える事。そのためには学び、開けていく未来がいるのだと。
1人でも多くの人に藤野さんの生き方を知ってほしいと切に思います。