リカ活動家の日々のこと

リカちゃん人形に着物を仕立てて着せる沼に浸かる活動家。

本「私たちが声を上げるとき」(集英社新書)

 

またすごい新書を見つけてしまった。

 

声を上げている女性たちのうしろには多くの女性たちがいる(いた)ことを教えてくれる一冊。

 

そして誰かが「英雄」にかつがれるプロセスには、多くの政治的な意向や社会的背景があることも改めて考えさせられる。

 

ローザ・パークスのバスボイコット運動は長いこと日本の英語の教科書でも題材にされているけれど、彼女が「善良で模範的で勤勉な黒人女性」だから闘いのアイコンになったという指摘にハッとさせられる。

 

この新書で知ったけれど、ローザが逮捕されたこの年だけでも、彼女の前に少なくとも五人の女性がバスで座席を譲ることを拒否して逮捕されていた。

 

ローザが逮捕された後に起こされた一年以上にも及ぶ「バス・ボイコット運動」を組織したのは地元の急進的な女性団体だったが、大学教授が会長を務める中産階級の黒人女性の団体だった。

 

パークスの行動とバス・ボイコット運動は公民権運動の始まりではなく、むしろながい伝統をもつ黒人女性の抵抗運動の帰結だったのである。(187ページより引用)

現場の女達の闘いに、中産階級の女達が戦略とロビー活動で繋がる連帯に胸が熱くなる。

 

冒頭に紹介されるテニス選手の大坂なおみにしろ、民主党国会議員のオカシオ・コルテスにしろ、その時々の発言やニュースは追っていても、学者ならではの視点でポイントを押さえつつ、全体としての生き方をコンパクトにまとめてくれているこの本はとても貴重だと思う。

 

登場する女性たちひとりひとりの生き方にエンパワーさせてもらえると同時に、この人たちの周りで支えた人たちの存在を強く感じる。

 

何と言ってもそれぞれのエピソードを著者の5名の女性学者たちが、補足したりバトンをつないだりしながら編み上げていくこの編集方法に脱帽。

 

その編集方法も含めて、こんなにまるっとシスターフッドに溢れた一冊はそうないと思う。

あ、なぜかこの本カバーが2種類ついていた。

多様な女たちの姿を生き生きと伝える冒頭の表紙もいいですが、よくある集英社新書の装丁のこちらのバージョンも結構好きです↓