実は先月懲りずにまた字幕トライアルを受けました。
お題の映画がこちらのイギリス映画「オフィシャル・シークレット」
2003年のイラク戦争開戦直前にアメリカとイギリス諜報部の汚い裏工作を内部告発したGCHQ(英政府情報本部)の職員キャサリン・ガンの裁判を丁寧に取材して作られたのがこの映画です。
主人公はキーナ・ナイトレイ。
以前ビッグ・イッシューのインタビューで「パイレーツ・オブ・カリビアン」に大抜擢されて超有名になった時でも「撮影中も実家に帰ると兄たちと反戦デモにでかけた」と語ってたキーナ。
キャサリン・ガンの事件を知っていたかと聞かれた彼女は
政治的な意識は強いほうですが、この事件のことは知りませんでした。作品内でも触れていますが、当時米国では全く報道されなかったのです。記憶に残っていないこの事件の重要な出来事に大きな興味を抱き、出演を決めました。社会に大きな影響を与えた事件で、忘れてはいけないものだと思います。実際、私は事件を知らなかったのですから。
(「オフィシャル・シークレット」パンフレットから引用)
と、語っている。
この「政治的意識は強いほうです」と言い切る確立された人格と、にじみ出る演者としての自負心!
実際、あのイラク戦争から20年も経ってから作られた、この映画にしにくいテーマ(正直言って)の作品を彼女の演技が支えていると思う。
まぁこれはキーナに限らず、あの「ハリー・ポッター」のヴォルデモート卿役のレイフ・ファインズやら、「ノッティングヒルの恋人」でヒュー・グラントの同居人役だったリス・エヴァンズ、他にも続々と今をときめく名優がこういう骨太作品にしっかり出演するところも含め、イギリス映画って層が厚いなと改めて感じます。
で、この作品、トライアルとしては事実がベースなので下調べが途方もなく必要で、英語力より調査力と裏付け力が求められる作品。
が!!当時友人たちと私は大阪城公園でこんな人文字を作っていたわけです。
イギリスのビッグ・べンの下での史上最大の反戦デモの映像も映画で出てきますが、あの写真に励まされたあの頃の記憶がよみがえりました。
あのちょうど同じころにほとんど同世代の女性がイギリスでこんな切羽詰まった状況で内部告発に踏み切っていたことは私も知りませんでした。
でもイラク関連の本だけでも家にはこんなにあって資料には事欠かない。
まぁ当時の経緯を知りすぎていたために「ネオコン」をそのまま説明もなしに字幕に使ってしまうというトライアルとしては痛恨のミス(20年後の日本の視聴者でネオコンがすんなりわかる人の比率は多くないよねぇ)をしてしまった訳ですが…。
それはさておき改めて米英のあの国連決議のないイラク攻撃がどれほど無法でデタラメな戦争だったかが骨身に染みる作品です。
同時に大国に盗聴されて「賛成に回れ」と脅されても屈しなかった安保理事国の決して大きいとは言えない国々の踏ん張りを初めて知ることができました。
最後にパンフレットの表紙がめちゃくちゃ秀逸なので載せておきます。
真実は常に戦争の最初の犠牲者になる
これ、すごい良い作品なのにコロナ禍であんまり日本で観れてる人が少なそうなのが残念過ぎる。
是非機会があればご覧ください。